2012/11/4 10年後にまた会おう

 公開までいよいよ一週間を切り、落ち着かない気分が続いている。

 やることは減ったので、他の映画でも観に行こうかと思うけど、あまりそんな気分にならない。

 

 何かやり残したことは無いか、これからはできることは無いかと考えてしまう。

 実際に宣伝で、あと一週間でできることは少ないし、大手の配給宣伝の人と話していても、その手の映画は基本的に公開一か月前で、その映画の宣伝の仕事は終って、他の作品に移るそうだ。確かにやることは減るし、そうやって続けて手を打っていかなければならない事情も分かるけれど、なんだかひどく物足りないだろうな、と考えてしまう。

 というのは僕が劇場で働いていた経験があるからなのかもしれない。実際に映画が公開されて、初日から何週間も毎日お客さんの映画館に入っていく顔、出ていく顔をみていたから、そこまで見届けたい気持ちがある。そこで何かが初めて分かるようなことがあったりする。

 よく思い出すのは、映画が終わって、客電が上がり、みんなが席を立っても身じろぎもせず、ずっとスクリーンを見つめているような人がいる。入れ替えの時間も限られているので、席を立ってもらわなければならないけど、そういった人を見ているとどうしても声を掛けるのが憚られるような気持ちで、苦しくなったことが時折あった。

と、これは一方で呑気な気持ちなのかもしれない。映画館としては、一日何クールもまわして回収しなければならないし、無駄な時間は作りたくない。バイトの人も、早くお客さんを出して、昼飯に出してあげなくてはならない、とかそういう他の理由もあるもの理解できる。

 宣伝も映画館も、商売でやっているし、みんな生きていかなければならない。

 それは前提としてある上でも、もう少し違うやり方ができないのか、とはずっと考えてきたことだった。

 

 会社を辞めて、昨年、参加させてもらった『サウダーヂ』や、今やっている『Playback』はそういったことが一つづつ納得できる形で進められているようなところがあり、嬉しい。

 そして、そこにいる仲間は、志が高い(みんな金は無いけれど…)。そこに自分なんかが加わるのは、恥ずかしくなるくらいだけど、これから映画を撮り続けるために、今まささに地べたで泥の中を格闘している彼らの姿をみていると、自分にも少しくらい何かできることはないかと考えて、まだ映画に関わり続けている。

 そういえば、先週までユーロスペースで公開していた『ひとつの歌』の監督の杉田協士くんに久し振りにあった。

 彼は、映画美学校の5期生で僕も同期だった。同じく今オーディトリウム渋谷で公開している『5windows』の瀬田なつきさんも同期。もう10年以上前の話だれど、前の城内さんのブログにもあったが、別々の場所にいるにも関わらず、そうやって10年後まで映画という現場で出会うのはとても嬉しい。

 

 そして10年後に誰とまたどんな風に再会するのか。

 そんなことを考えた、冬の始まりでした。

 

岩井