ロカルノ雑感(2012年8月15日) 三宅唱

昨日帰国しまして、まだラゲッジもまったく解いてませんが、簡単にご報告を(結構長いけど)。


まずは既報の通り、賞を持ち帰ることはできませんでした。その代わりといってはナンですが、ロジャー・エイヴァリー氏(審査員団の一人)とのやりとりをご紹介します。
クロージングパーティーでお会いした際、ゆっくりと、丁寧に、何度も「I love your film」と真正面から眼をみて言ってくれました。Youのなかには、僕だけでなくこの映画に携わってくれた多くの人たち全員が入っているので、ひとまずここでお伝えする次第です。
「あなたたちがこの素晴らしいアイデアをたちあげ、困難を乗り越えて完成させた、その時点で奇跡が起きていることが映画をみてわかった」と。この言葉をきいて、ここ2年間ずっと一緒に『Playback』つくってきた友人(というかプロデューサーの松井さん)が、笑顔のままぽろぽろと涙を流し続ける姿をみて、ロカルノ映画祭という経験がこれ以上ないほどの幸福の時間だったことを心から実感しました。すべての疲労がぶっとびました。
心から敬愛してやまないアメリカ映画の、その先端にいる人物からこんな最高の言葉をもらったことが、えー、マジで意外だったし、クソうれしかったです。「きみたちにこのままずっと、もっと、たくさん映画をつくり続けてほしいと思う」と何度も言われたので、OKそうするほんとにありがとう、と思いました。


ほかにも、道ばたやレストラン、映画館で多くの言葉をかけられました。特に、南米やアジアを含む各国の映画作家たちからの熱いリアクションをもらったこと(実際コンペの何本かとは似た主題や形式を共有していてとても興味深かった)、また、明らかに年季の入ったシネフィルだと思われる高齢の方たちや、アカデミックに映画を研究されているに違いない若い人々から、巨匠達の名前を引き合いにした賛辞や拍手、ハグをもらえたことは、とても誇りに感じました。
スクリーンに映った俳優たちの姿・風景は、海外の観客たちにとっても、彼らの胸に多くのエモーションをぐるぐるさせることができたようで、いい手応えでした。
なお未確認ですがアピチャッポンほかのコメントなどもあるようなので(マタギキだとけっこう好感触だったんでだったらなんかくれよ的な…)、いずれ何らかの形にまとめてご紹介できればと思っています。


にしても、国際映画祭という場所・時間は、自分にとって、一人の映画監督として、はっきりいって生きた心地がしない、なんだろう…どんどん自分が老けていく気がするような?、奇妙奇天烈な場所でした。
はじめての海外映画祭、はじめてのインタビュー取材、あるいはそもそもはじめてのヨーロッパの町並みエトセトラ…という高揚感や興奮とあいまって、吐気がしたというか、恥ずかしながらリアルに高熱でちゃいました(え、ただの日焼け…?)。


映画監督として周囲の人々から受けるリスペクトの視線・扱いというのは、心地よさだけでは決してなく、「緊張感」つまり、なにかそれに正しく応答すべき責任がある、ということを強烈に、プレッシャーとして感じざるをえないわけです。これは名誉であり、と同時にとても恐ろしい。一緒にロカルノまできてくれた友人たちのおかげで、無事すべての仕事をこなせました(自己採点ではすべて100点だけどね!)。しみじみ、人として、映画監督として成長させられる場だったと思います。なんて、こんなことを自分が感じて、こんなところで書くなんて……ま、いいか。


ロカルノについて、一観客としては「最高。まじシネフィルすげー」。一外国人としては「街は最高、でも飯に飽きた」です。


また、賞レースについて。これは複雑なところで、共有できる感情ではないと思いますが、一応……。

そもそもこんなワケのわからんところで勝負するために映画をつくってない分、他人事のように「楽しみだな〜」くらいに思っていた一方で(というより、新人コンペですらなくインターナショナルコンペに入った時点でもうかなりイイでしょ!と…いままで我慢してたからちょっとぐらい言わせて…)、また、そもそも水モノのゲームだということをみんなわかってることも十分承知の上で、それでも、日本で期待してくれている多くの人のことをふと思うと、腎臓売ってでも悪魔と契約してでも100万回禁煙してでも、なんとしてでもめちゃめちゃなんか欲しいと思ってしまうもので。きっとこれからの興行に弾みもつくだろうし、とか…ああ、まじで具合悪かった。これがサッカーやボクシングの試合ならば勝ち負けがはっきりしてわかりやすいのになあ(しかも余裕で勝てそうだし…)、とか何度思ったことか。まあ、捉えようのない残念さなので、そんなものはなるべくすぐに忘れようと思います。
今後はもっと気楽に参加しつつ(結局のところ僕にとっては、自分と作品のあいだの距離がいつも問題なのです)、同時にこれまで同様、賞や映画祭など関係なく、ただただ撮りたい映画を撮ろうと思っています。
でも!なんも賞とれなくて、すみませんでした!


映画祭中、日記を書いたのですが、どこかでまとめて発表します。
みた映画の感想とか、しか書いてないけど。


さてさて、これから秋にむけて、ついに日本での興行の準備なるわけですが。いまどき白黒、無名の新人監督、いわゆるジャンル映画じゃない、113分とちょっと長い、レイトじゃなく昼間、自主興行、ってこう並べて書くと、かなり厳しい闘いがまってるのは間違いないわけです。もちろん、最初からわかってるリスクだし、それを自分たちでワイワイおもしろがってるわけですけど。映画はキャストなどのおかげでそれなりに話題になるかもしれないし、大コケする可能性もとても大きい。いまほんとに、映画館にお客さん集まらないし、傾向も偏ってる(と思う)。

でも、こんな映画がちょっとでもちゃんと話題になったら、たいしたもんじゃない?と。
ダメもとベースで、でももしあたったときはざまあみろだぞこのやろ、くらいの気持ちです(言い過ぎかな)。
劇場公開も、映画をつくることと全く同じで、うまいこといろんな人との出会いや結びつきが重ねれば、ガツンといけると思っています。引き続き、応援してくだされば嬉しいです。

 

補記:ロカルノで着ていたのは、ムラジュンさんにプレゼントしてもらった(!)WACKO MARIAのスーツでした。スーツ、めちゃめちゃ不良な形で超カッコいいんですが、おれが着るとどこからどうみてもタイガー・ウッズにしかみえないというのが現地での主な反応でございました。またしかるべきときに着ます。