【レポート】 シネマテークたかさき 初日舞台挨拶

 6月8日(土)、シネマテークたかさきでの公開初日を迎えました。14時の回上映後、20時の回上映前と二回にわたって舞台挨拶が行われ、三宅監督、モンジ役の渋川清彦さんが登壇。

渋川さんは群馬県渋川市出身ということもあり地元同然の高崎。そして監督は今年の高崎映画祭で新進監督グランプリを頂くなどすでに縁もゆかりも深い仲となっています。シネマテークたかさき・志尾睦子支配人の司会に招き入れられて始まった舞台挨拶。終始和やかな雰囲気で行われた模様を一部抜粋しながら振り返っていきたいと思います。

 

 渋川さんの、「群馬県渋川市」で始まるご自身の実家の住所を口上にした自己紹介、そして監督がお昼に名物、永寿亭のカツ丼を卵ひきで食べたことへの「通は違う、卵なしで食べる」という突っ込みから大分シネマ5支配人・田井肇氏が『Playback』の上映を即決したエピソードへ。

 

 

志尾「公開当初、九州の映画館のホームページを見ていたら<今後のラインナップ>という欄にすでに『Playback』が載っていたんです。「あれ?このひともう見たんだ」と思ってその支配人本人に訊いてみたら「いや、見てない」って言われて(笑)。見てないものを上映するような人ではないのでどうしてだろうと思って「なんで?なんで見てないのに決めたんですか!?」って驚いて訊いたら「だって志尾さん、35ミリだよ?あの若い子が35ミリに焼いたんだよ?それはやるでしょ」って(笑)。「わ、すごい。そういう決断って素敵」と思って。やっぱり私たちのような劇場をやっている支配人さんたちは35ミリにした面白い奴がいるってかなりみなさん心待ちにされていたと思います。で、やっと半年かけて11館目の高崎です。」

 

三宅「本当にありがたいです。」

 

渋川「例えばこれを35ミリにしてなかったらどうだったんだろうね(笑)。」

 

三宅「やれなかったかなぁ?(笑)」

 

志尾「それは難しいところですねぇ。いやいやそんなことない(笑)。」

 

三宅「ハハハ(笑)」

 

志尾「もちろん映画そのものに惚れ込むということはあるんですけど、それを越えた何かっていうのが物体として動いていくフィルムにはあるっていう——言ってみれば幻想だったりもするんですけど——そういうのはあると思います。」

 

渋川「シネマテークは全部フィルム上映?」

 

志尾「全部ではないです。全部ではないですし夏以降にDCPを入れるという方向で動いていますが、もちろん35ミリ映写機も残すのでウチは両方でやっていきます。」

渋川という名前は群馬県渋川市からとったというKEEこと渋川清彦さん
渋川という名前は群馬県渋川市からとったというKEEこと渋川清彦さん

  映画祭でのデジタル上映問題を解決すべく、DCP導入を決定したシネマテークたかさき。Playbackチームは1月に行われた高崎映画祭プレ企画のシンポジウムにもお邪魔させていただきました。

 

 話は三宅監督と渋川さんとの出会いからキャスティング秘話に移り…。

 

渋川「三宅君のひとつ前の『やくたたず』で先輩役をやった櫛野剛一ってやつがいて、そいつがオレの後輩で今度北海道の札幌で映画撮るって言うんですよ。で、オレも札幌にいきてえなぁと思ってそいつに言って三宅君に「ちょっとオレも出してくんない?」って訊いてみたらこのひと「今回は…」っていう感じでなんかバッサリ切ってきた(笑)。」

 

三宅「断ったんです(笑)。」

 

志尾「それはやくたたずに出たいということで?」

 

渋川「『やくたたず』に出たいっていうよりも札幌にいきたかった(笑)。」

 

志尾「(笑)お二人はそのときにはすでにお会いしていたんですか?」

 

三宅「ぜんぜん。お話だけ聞いてて。」

 

渋川「こっちはよこしまな気持ちで「札幌かぁ~」と思ってて(笑)。でもあとで話を聞いてみたらけっこう過酷な撮影だったらしくて。」

 

三宅「過酷だったすね。だからたぶん来ていただいてもご迷惑ばかりおかけするだろうなと思って、それで断ったんですよ?(笑)」

 

渋川「あーそうでしたか(笑)。まあそういうすれ違いがあって。」

 

志尾「『やくたたず』から『Playback」までは何年くらい間があるんですか?」

 

三宅「そんなにないですね。『やくたたず』が完成してから半年後には村上淳さんに見ていただいて。」

 

志尾「『Playback』は<ディケイド>さんっていう村上淳さんや渋川さんが所属しているプロダクションの製作ですけど、村上さんから話があって?」

 

三宅「そうですね。KEEさんとか皆さんにこういう『やくたたず』のやつが(笑)いるからってことで。」

 

志尾「脚本は出演者の皆さんにお会いしてから書いたんですか?」

 

三宅「脚本は一応先には書いていました。」

 

志尾「じゃああてがきではないんですか?」

 

三宅「最初にプロデューサーにはそんなにうちの事務所の俳優を使わなくてもいいよ、三宅君の好きにやっていいよって言われていました。だから自由に任せてもらったんですけど、いやいやオレぜんぜん使いたいんですけどっていうノリで、一応このひとにやってもらいたいなぁって程度には書いてはいましたね。」

ドラえもんの真似やってという振りに困る監督
ドラえもんの真似やってという振りに困る監督

 志尾「三宅唱監督から見た渋川清彦という俳優さんはどんな俳優さんですか?」

 

三宅「真面目ですね。プロって要するに真面目ってことだと思うんですけど、でもKEEさんはその真面目さがストイックってこととは違うんですよ。ずっと台本もってちゃんと集中する時間があってっていう普通のことなのかもしれないですけど、でもその中でも今回はご自分の中で脚本の一字一句をちゃんときちんとその通りに読むんだって最初に仰られていましたね。」

 

志尾「わりと語尾を崩したりするかたもいるって聞きますよね。」

 

渋川「そうっすね。オレも今まではずっと崩してやってたんですよ。でもあるときにある俳優が一字一句ちゃんと言っていて、その人と一緒にやったときに「うわーすげえな、オレにはこれ出来ねえな」と思った。例えば煙草吸うとかいろんな自分の癖ってあるんだけど、それってたぶん逃げになっちゃうんですよね。そういうのを一度やめて一字一句をちゃんと言ってみようかなと思って実際やってみるとやっぱりすごい居心地が悪い。普段オレが言わないことを言っているなと。でもそれでもきちんとやらなきゃいけないなぁと思って最近はその真面目っぽい感じになってるんだと思うんだよね。」

 

三宅「でもその居心地の悪さっていうのは俳優の演技にとって大事なことだと思うんすよ。どんな俳優でも恥ずかさみたいなものが演技をする上で人それぞれ色んなかたちであって、「演技って気持ちいいよ」というのが前提になっちゃうと逆に恥ずかしいものになってしまうと思うんですよね。」

シネマテークたかさき・志尾睦子支配人
シネマテークたかさき・志尾睦子支配人

志尾「『Playback』はひとつには男の物語だということができると思うんですけど、女優さんに対してちょっと遠慮がちなところがあるのかなっていう気がしたんですがどうでしょう?(笑)」

 

三宅「これは最初からいわゆる三人組の男の映画 —— アメリカ映画でも大抵男が三人組でつるんでいるっていう映画があるじゃないですか —— そういうタイプの映画になることはわかっていたんですよ。それでも女性を出したいと。でも男映画のなかで女性を平等に出したいっていうのは難しいからそこは割り切って、いわゆる男の映画に出てくる女性キャラにしちゃおうと。」

 

志尾「マドンナみたいな。」

 

三宅「それが今回はそれぞれの —— 男ってみんなある程度マザコンだと思うので —— 母親であり、そして妻である女と、ちょっとエロい女教師と、友達のかわいい妹っていう超おとこ目線の女三人で、あとはそれぞれの魅力さえ撮れればなにか思うところがあるんじゃないかなというつもりで撮りました。」

 

 

 ここに載りきらないほどたくさんの製作秘話が噴出したおよそ30分にもわたる舞台挨拶。最後にお二人から一言ずつ高崎のみなさんに熱い思いが伝えられました。

 

三宅「この映画が田舎の家族とか、あるいは昔の友達なんかに再会したときにいろいろ話したりするきっかけになってくれたらいいなと思っています。だから今日KEEさんの友達が来てくれたこととかがすごい嬉しくて。こんな映画あったよとか、この映画をきっかけに久しぶりにしゃべったり酒を飲みいったりとか、そういう時間を過ごすきっかけになってくれたら嬉しいです。」

 

渋川「オレもよくはわかってはいないことだけど今ってだいたい世間の大多数のひとは映画=シネコンじゃないですか。だけど自分たちで作ったこういうこれぞ映画っていうやつ、すごくいい感じだなっていう映画が全国をまわってて、続いている。それでいまここ高崎に来てます。宣伝隊長のみなさん、シネマテークたかさきをひとつよろしくお願いします。」

 

 

 このあと2回目の舞台挨拶も盛況のうちに終え、渋川さんは東京にとんぼ帰り。渋川さんの地元愛が垣間見れた一日でした。ご来場くださった皆さま、誠にありがとうございました。

 

 これから2週間シネマテークたかさきで上映が始まります。14時と20時の1日2回です。支配人志尾さんから「映画の力を取り戻す作品」という力強く嬉しいお言葉を頂いた映画です。ぜひぜひ近郊にお住まいの方、家族、友達が地元を離れているという方、あるいはご自分が地元を離れてしまったという方、映画館でお待ちしております。