【レポート】最終先行上映in『サウダーヂ』オールナイト

 1027日(土)、オーディトリウム渋谷にて『Playback』最終先行上映と『サダーヂ』の一周年を記念したオールナイトイベントが開催されました。渋谷の街はハロウィンの仮装をした若者で大盛り上がり。まずはそんななか映画館に集まってくださった多くの方たちに最大限の敬意を表したいと思います。ありがとうございました!


 さて、23:30より『Playback』上映後、01:40頃よりトークショーが行われました。空族の富田克也さん、相澤虎之助さん、Playbackチームから三宅唱さん、松井宏さんが登壇(司会:岩井秀世さん)。5人は壇上に腰掛けてリラックス。終始笑いがたえなかったトークの時間を一部抜粋しつつ、振り返ってみたいと思います。

 

まずは、両作品に共通している「フィルムで上映すること」から話はスタート。

 

富田「三宅君に35ミリにしたいと相談されたときに、俺らにそんな相談していいの?俺らはやれ!やれ!っていうしかないでしょう() 基本的には、バカだと反対されること。でも、三宅君がどのような思いでこの作品を世に送り出したいか、その切実さを感じた」


三宅「これから自分たちの身をもって体感することが多いだろうから、ある意味でとても楽しみ。もしデジタルのままならば、この時代をするっと通り抜けることもできたかもしれない。でも、自分の手元に35ミリフィルムがあると主体的になれる。できれば長い時間をかけてフィルム上映したい」

 

 デジタル上映・フィルム上映にまつわるエピソードとして、『サウダーヂ』はフランスではDCP上映以外の選択肢がなかったことや、映画祭での35mm上映時のトラブル(映写機の使用頻度が落ちているため)などが語られました。

 続けて、三宅さんから『Playback』の感想を二人に求めました。

 

 富田「『サウダーヂ』もそうだが、あきらかに何度も観るタイプの映画。はじめて観たときはフィルムの具合ばかり気にしていたことを覚えているが、今回は自分の処女作である『雲の上』を撮っていた感覚を思い出した。ちょうどいまの三宅くんと同じくらいの頃の年齢で、まんまと当時の記憶が「Playback」した(笑)」


 相澤「初号で見せてもらった時は、映画における記憶の扱い方について、あるいは映画史の記憶による映画として考えていたが、今回は全く印象が変わった。普遍的なテーマをしっかり捉えながら、同時に今の時代の映画として、誰にでも当てはまる状況が描かれていて、とても身近な物語として入ってきて面白かった。特に、こんなにも<死の匂い>が充満していたかと驚いた」

 


 富田さんから、『Playback』にはシナリオはあったんですか?とい質問。


 三宅「ほとんどシナリオ通りに撮っています。シーンの順番の入れ替えはなく、落としたシーンが2,3ある程度で、構成はいじっていない」

 

 富田「ところでこのホン、みんな理解してくれてたの?」


 三宅「撮影前は、撮ったらわかるよ、と言っていた。現場終わりには、繋いだらわかると思う、と(笑)。編集中は完成したらわかるからと言いながら作業していました」


 富田「その作り方は、空族だったらあり得ない。分かってくれないと、まず高野さん(空族カメラマン)が来てくれないと思う()

 

 相澤「おれたちだってわかってないとも言えるけどね」

 

 富田「え?わかってるでしょ?わかってるよ!」

 

 お互いの共同作業について、具体的なエピソードを交えて語られました。続いて、空族という存在をPlaybackチームがどのように観ていたかに話は移りました。


 三宅「同時代に空族がいてしまっている、ということ。ほんとに、いなきゃいいのに(笑) どう影響を受ける受けないはさておき、作り手ならば無視することは絶対にできないと思う。だからといって空族の真似はできるものではないし、意味がない。むしろ、より自分なりのやりかたを模索するきっかけになった。単純に「いろんな映画があったほうがいい」と一観客としても豊かさを求めている」


 富田「豊かさといえば、よく勘違いもされていて心苦しいが、サウダーヂがこれだけヒットしても金にならない、ということはよくわかった。もうそういう時代ではない。でも、金じゃないんだ、ということも言える。いまの時代には問題も多いが、インディペントが色々な方向でもっと突出した作品がでてくるチャンスにもなりえる」


 三宅「いま、重要なのは時間なのではないか。短期間で上映と回収を済ませざるを得ない大手は、その意味で時間をもつことを許されていない。ぼくらの場合はどれだけ時間をかけられるか。大変だが、じっくり時間をかけることができれば、それ自体がまったく新しい価値にどんどん転化していくはず。それこそが、お金ではない贅沢さだ、と

トークの終わりにはQ&Aが行われました。

 会場からの質問1「松井プロデューサーの役割についてぜひお聞きしたい」


 松井「今プロデューサーという肩書きがついているけれど、なにをやっているのかは今でも自分でわかっていない。たまたま映画のきっかけのようなものを自分がつくることになった。役割は明確にはわからないけれど、この映画の公開が終わる最後までつきあうつもり」


 三宅「もともとは「Nobody」という雑誌の編集者であり批評家である彼が、映画をつくるというリスキーなことに数年以上の実人生を賭けてくれた。一緒に付き合ってくれたことは大きな支えになっている。ケンカばかりしているけれど(笑)」


 富田「映画をつくるのも、そしてみるというのも、賭けみたいなもの。かつて一時期の日本映画には「こいつに賭ける!」という人がいたことによって成立した豊かさもあるが、今の時代は、今までとは違う意味での賭けになる。作り手と観る側が近くなった分、賭けやすくなったとも感じる」

 

 

 会場からの質問2「不思議な映画だった。ふとノスタルジーという言葉が浮かびそうだったが、なにかが違う。決してノスタルジーではない。映画の終盤のあるシーンでは思わず涙してしまったが、あれはいったいどういう感情なのか、自分でもわからない。この感情はどうやってつくられたのでしょうか?」

 

 三宅「必ずしもノスタルジーは否定していないが、そうではなく、新しい感情をつくりたいと思い、脚本の細部を積み重ねっていった。トニー・スコット監督の『デジャブ』がずっと好きで、自分はあの映画をみて、新しい感情を知った。そしてこれこそ映画だ、と思った。結果的にもちろん違う映画になったのは当然だが、出発点はそこにあったと思います

 

 松井「ノスタルジーになってはなるまいという意思でシナリオを書いていたよね。そこは結構一緒に話したことを覚えています


 三宅「実は、今日の二本は、どちらも「失われたもの、過ぎ去った時間についてどのような態度でむきあうか」という点で共通している、と考えている。まさに『サウダーヂ』はそれがタイトルになっているが、悪い意味でのノスタルジーにはなってない。その理由を考えると、空族の映画には実はルサンチマンがあるようでいて、実はそれがない、あるいは別の形に昇華しているのではないか。この点が『サウダーヂ』の貴重な価値だと思う」


 富田「確かに。自分らもそれには実はこだわっているところがある」


 

 『サウダーヂ』と『Playback』。作品の方向性も作家性も違う両作品ですが、思わぬ共通項や発見も多々あり、総じてそれが映画全体の豊かさに繋がればと言った両者の認識は、今後の日本映画の未来を感じさせる一晩となったことと思います。

 

 さて、サウダーヂ一周年記念&フランス公開記念上映は引き続き開催中です。詳細はコチラ

 また『Playback』と同じ公開日の11/10からは相澤虎之助監督作『バビロン2-The Ozawa-』もアップリンクにて公開されます。詳細はコチラ

 是非、どちらも併せてご覧下さい。

 

 

 

 

終了しました!

 

 「『サウダーヂ』を観て、この映画もフィルムにしようと思った」と『Playback』監督の三宅唱が語るように、この両作品はデジタルで撮影され、キネコしてフィルムに焼き直された作品です。

 

 また『サウダーヂ』は昨年の10月に渋谷ユーロスペースで封切りされましたが、ほぼ一年後に『Playback』がその下のオーディトリウム渋谷で封切りになる、という巡り合わせからこのイベントが企画されました。

 

 しかも、『サウダーヂ』は今も全角各地を廻り上映を続けています。これは、シネコンでかかる映画のようにめまぐるしく番組が変わり、いつのまにかDVDで発売されているというような流通システムとは相反した動きなのかもしれません。しかし選択肢の一つとして、ゆっくりと時間をかけて全国を廻り、違った場所の様々なお客様に観て頂く、ということは消え去る必要はないし、同時にあってもよい気がするのです。

 

 そして、できれば『Playback』も公開後長く上映をして、全国各地を時間をかけて廻っていく、息の長い映画になればよいなと考えています。

 

 オールナイト当日は、空族・富田克也監督、相澤虎之助さん、「Playback」チームからは三宅唱監督、プロデューサー松井宏さんをお迎えして、それら現在の日本映画を巡る状況、あるいは作品制作の経緯などをお聞きする予定です。

 

 

 日本映画の新しい潮流にある二作品の、出会いとなる一晩をどうぞお楽しみ下さい。

 

 

【日時】

10/27(土)23:15-開場/23:30-スタート(5:00終了予定)

【上映作品】

『Playback』(113分)

『サウダーヂ』(167分)

【ゲスト】

空族[富田克也監督&相澤虎之助]

Playbackチーム[三宅唱監督&松井宏]

【料金】

前売2000円(劇場窓口にて販売/整理番号付)

当日2300円

『サウダーヂ』オールナイト詳細はコチラ→ http://a-shibuya.jp/archives/2023

オーディトリウム渋谷 http://a-shibuya.jp

東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F TEL.03-6809-0538